イラストレーターもWebデザイナーもコピーライターも顔を揃える個性豊かな老舗デザイン事務所。
K.Hさんのデザイン会社に行って
いろいろインタビューしちゃいました!
一番のきっかけは父が病気を患ったことでした。
もともと私は父の作ったこの会社とは全く関係ない仕事をしていましたので、ここに入社することも後を継ぐことも考えていませんでした。
えー?!そうだったんですね。では以前はどんな仕事をされていたんですか?
前職ではウェブのデザイナー&ディレクターをしていて、その前はミュージシャンをしていました。
また随分変わった経歴ですね。ミュージシャンは・・・事務所に所属して?
はい、そうです。
バンドのリーダーとして自分で曲を書いてプロデュースして、CDジャケットやフライヤー、ホームページなんかも全部自主制作していました。
当時からデザインって面白いなと感じていましたね。
なるほど。それでウェブデザインに興味を持たれたんですね。
20代前半の頃に色々と将来のことを考えて、音楽をやめる決断をしたんです。
で、この先はやっぱりデザインをやってみたいなと思って、デジタルハリウッドというウェブの専門学校に通いはじめました。バイトしながら社会人コースという9ヵ月間くらいの短期コースでみっちり学んで、ウェブの制作会社に就職した、という流れですね。
そのウェブ制作の会社にお勤めの頃にお父様が病気に?
そうなんです。
心臓を患って倒れたので、急遽誰かが後を引き継がなければ・・・という状況になって。母は経営なんてできないし・・・自分がなんとか力になれればと思ってこの会社に入ることを決めました。
私は一人っ子なんで、家族の問題は必ず何かの形で自分が背負うしかないっていう変な責任感みたいなものは子どもの頃からありましたね。 笑
結果的に父はその後回復して今も元気ですので、私の良き相談役となってくれています。
そして、絶対にイヤだと思っていた父の会社に入社。
いえ、父の会社はウェブではなく、グラフィックデザインを主とする会社ですので、いきなり入社して私が何かできるわけではありません。ですから、まずは関連会社に出向という形で1年間の予備期間というか修行期間を設けてもらい、その後に改めて入社という運びになりました。
業界のことを色々と知ってから、ということですね。
ただ、私の場合は入社してデザインをやるのではなく、営業として飛び込みで仕事を取ってくるようなことから始めました。近い将来、会社の経営に携わることを見据えていましたから。
いつ頃から経営サイドに移っていったんですか?
まぁ徐々にそういう空気になっていくんですが 笑
最初の3年は多方面で修行をしなさいという感じでしたね。周囲の反応も含めて。まだ業界のことも知らなかったですし、自分でも当初3年は修行期間という意識を持っていましたので。
ただ、やっぱり身内の会社なので、自然と社員さんたちとは違う動きになっていたのかもしれません。経営に不安を感じると飛び込みで取ってきたり、顧客の選び方も将来的な展望を見据えて独自の考えが働いていたような気がします。
そうした意識の違いを周囲の人たちも感じてくれるようになって・・・結果、5・6年経過して副社長になりました。
そもそもお父様の会社や仕事に興味はあったんですか?
昔から親父の会社になんて絶対入らないって思ったんですが。笑
ウェブの専門学校に行き始めた頃から、ひょっとして業界が近づいていくのかなぁと思うようになっていました。
子どもの頃は、社長の息子だからってなにかとボンボン扱いされたりして、それに対する反発が常にあったんですけど、運命ってやっぱりあるんですかね 笑
今は、音楽もまたやりたいと思っているので、会社としてレーベルを作って自主制作でやるのもいいですし、すでに社内にはCGやイラストなどのコンテンツもあるので、音楽とのコラボもやってみたいですよね。
やるからには徹底的にこの会社を活かし尽くしたいです。
その経験を生かしながら、2代目として日々奮闘。
どういうわけか、小さい頃から習い事でも部活でも、いつもリーダーとか部長とかをやっていました。目立ちたがり屋ってことではなかったけど、やっぱり変な責任感のせいですかね。
高校のときは器械体操部だったんですが、同期では一番下手くそだったのに、なぜか部長をやらされたり・・・。リーダーってよく悪口とか言われがちじゃないですか、「部長のせいだ!」とか。お陰でそういうのは言われ慣れましたね。小学生のころから。
普通は傷つくんですけど、人よりは免疫があると思います。陰口とか・・・割と大丈夫になりました。 笑
2代目として社長をやっていく上でのデメリットってありますか?
やっぱり初代がつくった会社ですから、初代の社長を魅力的に思う人が会社に残るんです。その初代のイズムが好きなわけですから。
ところが、そこに息子が入ってきて後を継ぐ。
それまで新入りの息子のために仕事を教えてくれてた人たちが、その後、逆にその息子に指図されるようになる・・・。当たり前の感情としてすれ違いが出てきますよね。
おそらくどこの会社でも起こりうることだと思います。正直、心情的にはキツいですよ。笑
そこをうまくやるのは、すごく難しいことです。
だから、圧倒的な実績をつくって、皆さんに認めてもらうのが一番いいって思うんです。そう思って頑張るんだけど、そこでやりがちなのが新規事業です。でもだいたいそれでコケるんですよね。
「オレはこれで忙しいから君たち違うことやっといて」みたいなことになって、いつの間にか社員とのすれ違いが始まる、というような。
幸い弊社では、そういうことがないようにやれているから良かったですけど。
経営者として忘れがちなことや気をつけていることは?
どうしても、経営側に立つと今まで見えなかったところが見えてきてしまって、一気に不安になって、焦って、自分で仕事をとりに走って・・・結果、他の仕事ができなくなって、疲れて過労で倒れる、ってことになりがちですよね。他の経営者の方々と話していても皆さん同じような経験をされているので、そういったところは気をつけるようにしています。
また、そのパターンにはまると、今頑張ってくれている人たちへの感謝の気持ちを失いがちになってしまう怖さもあります。だから、そこが抜け落ちないようにクセづけることも、大変ですが胸に刻んでいます。焦ってしまうと、どうしても見えなくなってしまうから。
父と似て、割と短気というか、感情的になりやすいところがあるので・・・そういう意味でも注意が必要だと思っています。だいぶ抑えられるようにはなってきているんですけど。
あとは人数と役割と実力を合致させていくことが大事。
今、力を入れている仕事のひとつがキャラクター開発によるライセンス事業です。
これは、スタートして5年〜10年で結果が見えてくると言われていますが、だいぶ認知度も高まってきていて手応えを感じています。キャラクターを通じて従来のデザイン業務の受注にもつながっていますし、直接クライアントに営業をかけやすいメリットもあります。
デザイン業務自体も、人が足りなくなっていて、直近の仕事に追われている部分はありますが、人材を強化しつつクオリティをしっかり上げていけば将来性は十分あると思っています。
単価など金額的な問題は対話によって解決できることもありますから。
改めて、会社のアピールポイントは?
やっぱりイラストですね。
もの凄く幅広いタッチで描けるところは最大の武器だと思っています。CGでも描けますし、うちを卒業していったフリーランスもたくさんいて、今でもお仕事をお願いしていますから。
そういったネットワークの大きさが、弊社の対応力につながっています。
この会社に入ったとき・・・かな。自分がここに入るとは全く考えてなかったというか、あり得ないと思って生きてきたので。笑
それが家族のピンチとなったら、全く正反対の気持ちになりましたからね。自分でも驚いています。なんでそんなにやる気が出たのか分からないけど、やっぱり、何か運命的なものがあったのかなぁ、と。本当にそれがきっかけで、人生について一気にさまざまなことを考えるようになりましたね。
母親や嫁にこの会社を継ぐと伝えたとき、涙を流して喜んでくれて。 代わりにやってくれる人なんていなかったわけですから、経理の方々や税理士の先生たちも不安に思っていたところでしたし。 重圧があるから、苦しいからといって、誰かに相談できるわけではないけど、最近、父親だけには少しだけ相談できるようになった気がします。良き理解者ですかね。
同じ苦しみを経験したというような話を聞くと、ちょっと楽になることがありますよ。
あり得なかったはずの父親の会社の仕事を今やれているのはなぜですか?
これまで、本当に死ぬほど辛いことが山ほどあったし、すごい重圧でぶっ倒れたこともあるし、鬱になったり・・・かなりヘビーなところまでいってしまったこともあります。 それでもやれているのは、何度も言うようですが、やっぱり責任感としか表現できないですね。
それと、辛い中でもつながっていったお客様と面白いお仕事ができたりしたことも大きかったと思います。
とにかく経営的に潤って、みんな『居心地がいいからもっとこの会社にいたい』と思ってもらえるまでは、がむしゃらに頑張っていきたいと思っています。
今後はどうしていきたいとお考えですか?
会社をこれ以上大きくしようとは考えていません。
それよりも、みんなのことをきちんと把握できる規模でありながら、一人一人がちゃんと潤うような会社にしたいと思っています。そのためには、やりがいや付加価値のある仕事をしなければいけません。
今までと同じことをやっていてはダメなんです。例えば、新卒を採用するなど、新しい感覚や空気を入れて、井の中の蛙にならないようにすることも大事かもしれません。
経営者としては、自分がやるべきことの線引きを明確にすることが大事だと思っています。どうしても全部自分で抱えてやりたくなってしまうので。 人に任せることの難しさを痛感しつつも、任せるところは任せるようにしていくつもりです。
そのためには、自分の右腕となるような人材を育てることも求められていると感じています。
経営者ならではの貴重なお話
ありがとうございました!
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